こんにちは、元公務員ライターの新美(@inaka_free213)です。
皆さんは「しょぼい喫茶店」というお店をご存じでしょうか。
若い夫婦が東京の新井薬師で開いた喫茶店なのですが、
大学時代に100万円の出資を受けて、卒業後にすぐオープンしたという、ちょっと変わった経緯の喫茶店です。
特徴的なのは、Twitterで集客しつつ「しょぼく」営業していること。
店長の「えもいてんちょう」こと池田達也さん(@emoiten)は「働きたくない」という思いから開業に踏み切ったのだとか。
その開業前~現在の経緯が書かれたのが『しょぼい喫茶店の本』です。
軽い気持ちで読んでみたらえもてんさんの一連の考え方にとても共感したので、今回レビューを書きました。
※以下、若干のネタバレあります。
目次
働きたくないから、自営業というレールに乗った
最初は就活がうまくいかず、そもそも働きたくなくて、その葛藤でかなり鬱々としていた「えもいてんちょう」さん(以下、えもてんさん)。
最初の方は読むのが辛いほど、リアルにその辛さがつづられています。
でもそんなある日、元「日本一有名なニート」と知られているPhaさん(@pha)の「自分の価値基準で幸せを決める」という言葉と出会い、
等身大の自分を受け入れられるようになります。
ただ、だからといってどうやって生きていこう…と思った時にTwitterで「えらいてんちょう」さん(@eraitencho)の事を知ります。
彼のブログで斬新な店舗経営のやり方を知ったえもてんさんは、自営業という生き方を選ぶことに決めたのです。
開業資金については、えらいてんちょうさんの友人であるカイリュー木村さん(@ababa2017)から、「いいっすよー」と100万円もらえることに。
なぜ100万円をもらえることになったのかは、ぜひ著書をご覧ください。えもてんさんはチャンスを掴む勘にとても優れている人なんだと思います。
資金調達や店舗探しなど、何度もつまづきながら少しずつ前進する様子がとてもリアルでした。
公務員を辞めた私は「自分の価値基準で幸せを決める」というPhaさんの言葉にとても共感し、同じく感銘を受けていたえもてんさんにとても親近感を持ったのでした。
「会社に勤めないと社会人じゃない」「公務員を辞めるなんて信じられない」
そんな「社会の価値基準」に縛られなくなった今、とても幸せであることを、どこか肯定されたような気持ちになりました。
ピンチ時の施策は「掃除」「機嫌よくいること」
開店後しばらくは軌道に乗り、毎日1万円以上稼げている時期も続きました。
しかし、GW後に店を休みがちになったあたりから、収益は下火に。
モーニングを始めるなどさまざまな施策を展開するも、なかなか結果が出ません。
そんな時、えもいてんちょうは「僕のやるべきこと」として店の掃除を始めます。
経営者として、皆が楽しくやりたいことをやりたいだけやれるように、環境を整えることが自分の仕事だと気づき、行動に移したえもてんさん。
裏方として場所を守っていくことの大切さを知り、実行し始めた頃から、またしょぼい喫茶店は軌道に乗り始めます。
お客さんやお店を手伝ってくれる人などの「店に関わってくれる人」を大事にし、一緒に働いてくれることに感謝している姿勢にハッとしました。
特にフリーランスの仕事をしていると、いろんな人と関わることがありますが、
相手の立場や気持ちを考えてコミュニケーションしていくとうまくいくし、
逆にこちらの利益を守ろうとしすぎると、それが返ってくるな…という印象があります。
相手の気持ちを思いやり、お互いが気持ちよく仕事できるよう常に機嫌よくいること。
公務員時代にも教わったことですが、フリーになって顔の見えない人と仕事をすることが多い今、改めて心がけていこうと思いました。
最後に開業ノウハウも。本気で開業したい人にもおすすめ!
本終盤には、「飲食店の始め方」という項目もあります。
物件は「○○」というワードで検索するといいと思います、とか
こういう失敗をして焦ったけどこのように挽回した、ということがとても丁寧に書かれています。
開業に必要な資金、店舗の探し方、必要な資格や許可、開店までの準備など、開店に必要なことが網羅的・具体的に書かれていて、
えもてんさんの親切な人柄がうかがえるなあ…と思いました。
かつ、前半は実際に開店してからのエピソードが書かれているので、喫茶店を開きたい人は指南書を買わなくてもこの一冊で済むのでは…?
そして、最後にもう一人の従業員でありえもてんさんの妻である、おりんさん(@owajourney)とのなれそめの話もあります。
おりんさんは、東京で3年間看護師として働いていましたが鬱になってしまい、当時は実家の鹿児島で療養生活をしていました。
そんな彼女が、えもてんさん一人で始めようとした「しょぼ喫」になぜ加わったのか。
開店当初はどのように乗り切ったのか、そしてプロポーズはどんな感じだったのか。
まさかのプロポーズの内容まで書かれており、仕事に疲れて辞めたいと思っている方はもちろん、
自営業の人がどうやってパートナーを見つけるのか知りたい方も必見です。
そしてそのあとに、おりんさんによるあとがきもあります。
東京で3年間看護師として働いて、鬱になったこと。
辞めたいけど「辞めたら死ぬ」と思っていたこと。
「毎日『死にたい、生きるのを辞めたい』と思わなくても済む日々」が送りたいと思ったこと。
そうして、光にすがるように上京してきたおりんさんが、「死にたい気持ち0」の手にパーン!とタッチするくだりは、
個人的にこの本で一番刺さりました(詳しくは著書をどうぞ)。
まとめ:自営に興味がある方、会社勤めに疲れた方におすすめしたい本です!
最初は「出資までしてもらって実店舗経営するなんて、どんな感じだろう?」と思って手に取った本でしたが、
2人の等身大の生き方に、なんだか背中を押された気がしました。
公務員という「社会的に正しいとされるレール」を外れ、自営業に転向した私には「自営業というレール」という言葉はとてもしっくりきました。
年功序列で、毎年昇給して…というようなわかりやすいレールではないけれど、
「嫌なことをせず、慎ましくとも穏やかに生きていきたい」という気持ちは、レールというのにふさわしい強度があると思うし、とても共感できるものでした。
そして、「その方針には具体的なやり方があるんだよ、成功例もあるよ」とわかりやすく教えてくれるのが、この『しょぼい喫茶店の本』だと思います。
会社員として生きるのが辛い方、自営業をやってみたいけどなかなか勇気が出ない方、喫茶店を開きたいけど資金調達に困っている方…
いろんな方におすすめできる本だと思います。気になった方はぜひ読んでみてください。
えもてんさんの言う通り「魔法はない」と思うけど、
「魔法は起きる」と信じて毎日泥臭く努力するのが大事だし、この本はその勇気を与えてくれる気がします。
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